映画「せかいのおきく」
たまたま出てきた映画紹介のネットニュースの記事。
その記事は絶賛していたのだ。
白黒映画、たまにカラー。
黒木華が昭和の感じにぴったりで。
出演の男性俳優も演技はばかりで見応えあり。
と。
すぐに調べた。
上映している映画館が少ない。
きっと上映期間も短い。
近場は中間市、もしくは博多か大分市しか上映してない。
よし。と翌日に中間市へ出かけた。
「何が言いたかった映画なの?」
と終わった直後に聞かれ、「・・・・」となった。
武士という階級がなくなったばかりの時代。
それでも身分制度の名残が残っていて、元武士の父を持つ娘と、汲み取りを仕事とする下の下の青年の恋の話。
好きとか愛しているとかのセリフがあるわけでもなく。
手を握るとかキスをするとかの場面があるわけでもなく。
会話の、他の人と好きな人との違いで恋心がわかり、視線で、間で、恋心がわかる。
そう、間 が美しい映画だった。
佐藤浩一とその息子 寛一郎 の親子共演。
そっくりだった。顔が父に負けず濃い!
ネタバレ記事によると、白黒にしたのは糞尿のスクリーンいっぱいの場面が何度もあり、糞尿をかけられるとか溢すとかの描写があり、カラーではリアルすぎて映像としては酷いので白黒にしたとか。
私が子供の頃、トイレはまだ汲み取りだった。
汲み取りの車が来て取ってもらっていたが、畑の肥やしにする時は、父が大きな缶(業務用のペンキとが入っているような)に汲み取って畑に撒いていた。
この映画の場面にもその場面がある。
私にはリアルに思い出せる臭い。
その時だけは映画の中にいる気分だった。
最近は下水も整ってきているから、バキュームカーもあまり見なくなった。見なくなったから、あの、独特の臭いも嗅ぐことがなくなったなーと映画を見終わって思った。
今の子達は、嗅いだことがないかもしれない。
もしかすると自分の糞尿も見たことない子もいるかもしれない。(ちなみに私の友達にはいた。用を足した後は見ずに流すと言っていた)
最近のトイレは勝手に流れるものもあるし。
個人的には、健康管理にもなるから、自分のは見た方がいいと思うんだけど。
話がそれた。
とにかく、視線や動作が美しい映画だった。
観る側が心の動きを想像する映画だった。
静かな映画だった。
黒木華の美しさが心に残る映画だった。